東京高等裁判所 平成7年(ネ)4737号 判決 1996年3月25日
控訴人
東日本テクノコム株式会社
右代表者清算人
白鳥信夫
右訴訟代理人弁護士
堀裕一
木島昇一郎
被控訴人
大成火災海上保険株式会社
右代表者代表取締役
松村哲昭
右訴訟代理人弁護士
松山正一
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
原判決を取り消す。本件を東京地方裁判所に差し戻す。
二 被控訴人
本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。
第二 事案の概要
次のとおり付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第二に摘示されたとおりであるから、これを引用する。
1 原判決五頁四行目の「二五〇〇万円」を「二五五〇万円」に、同九頁六行目の「によって」を「の許容される場合として」に、同九行目の「保険」を「本件各損害保険契約」にそれぞれ改める。
2 同一二頁八行目の「残価率」の次に「(残存価額の再調達価額に対する割合)」を加える。
第三 当裁判所の判断
当裁判所も、本件訴えは不適法として却下すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第三に説示されたところと同一であるから、これを引用する。
1 原判決一三頁六行目から七行目にかけての「脱法の」を「法律上の規制を潜脱する結果となる」に改める。
2 同一四頁五行目の「しかるに」から同一五頁一行目末尾までを次のとおり改める。
「これら被保険者と控訴人との間に、両者を社会的、経済的に一体のものとみるべき特別の関係があるような場合は格別、そのような関係がないにもかかわらず、控訴人に対して本件各損害保険契約による保険金請求につき任意的訴訟担当を許すとすれば、被保険者を特定し、その損害を填補することを目的としている右各契約の趣旨を逸脱する結果となる。控訴人は、コンピューター保守業者として、自己がメーカーに支払う修理費が保守契約に基づいてユーザーから受け取る保守料を上回ることになった場合に備え、ユーザーをいわば名目上の被保険者として本件各損害保険契約を締結したものであり、ユーザーは自らを保険金請求の当事者とは考えていないのが実態であると主張するが、仮に控訴人主張のような契約実態が存するとしても、これをもって前記の社会的、経済的な一体性を示すものということはできず、また、これに対してはそのような実態に即応した保険形態又は保険金請求の前提たる権利の帰属形態を形成することによって対処すべきものであり、そのような実体的な権利形態の整備を経ることなく、単なる経済上の便宜から任意的訴訟担当を認めることは、権利なきところに権利を付与するのと実質において異ならない結果を招くものであって、合理的必要を欠き、相当でない。」
そうすると、本件訴えを却下した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官加茂紀久男 裁判官鬼頭季郎 裁判官三村晶子)